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ポケモン民話集 「オクタン」

2024年10月13日にポケットモンスターの開発元であるゲームフリークから機密情報が大量流出し、海外を中心に様々な資料が公開されています。

本稿はそんなリーク情報の中に含まれていた文書のうち、《オクタン》の創作民話と考察です。誤字脱字の修正、改行の調整、「」の追加などの編集を入れているので原文とは若干異なります。

一連の創作民話の中でも毛色が独特で、生物としてのポケモン、生態系としてのポケモンは全く出てこない話です。出てくるポケモンたちは人間の寓意であり、本当にポケモンがいる世界であれば、こういう伝承が残るだろう――というリアリティを追及する目的で生み出されたものと思われます。

ゲームで採用されている「トバリの神話」に類似しており、そのバッドエンドパターンとも言えます。

目次

本文

P1

テーマ:文化/関係性の崩壊

ポケモンと人の境が曖昧だった頃。海辺の村に一人の男がいた。ある日男が海岸を歩いていると、砂浜に打ち上げられた牝のオクタンがいた。男はオクタンと交わって、それを海に投げ捨てた。次の日も同じ場所に行くと、同じオクタンがいた。男はまたオクタンと交わって、同じように海に投げ捨てた。

何日か過ぎた晩。男は夢を見た。夢の中であのオクタンが言った。

「わたしはあなたのところへいくことはできませんが、あなたの赤ん坊を届けます。あなたとわたしの赤ん坊です」

翌朝、男はオクタンと出会った場所へ行った。 そこに男の子がいた。男はその子を連れて帰り、育てた。月日が流れ、男の子は青年になり、父親は死んだ。青年はいつもひとりぼっちだった。

ある日青年が海岸を歩いていると、遠くの方で、大勢の人が遊んでいるのが見えた。人たちは皆、その手にとても大きな刀を持って舞踊っていた。青年は、人々の方へ近寄っていった。すると海岸にはサメハダーが戯れていた。青年がさらにそばに近づこうとすると、サメハダーたちは一斉に海に飛び込んでいった。ただ、一匹のサメハダーだけはすぐに行ってしまわず、辺りを三度見回してから、去っていった。

サメハダー達が遊んでいた場所に行くと、そこに大きく刀が落ちていた。それは、見た事もない形をしていて、とても鋭く尖っていた。青年はその刀を持ち帰った。

次の日。青年は刀を持って森へ行った。森を歩いていると、リングマに出会った。ためしに青年は刀でリングマの口を斬りつけた。簡単に口が落ちた。こんどは刀でリングマの目玉を突いてみた。簡単に目が潰れた。

P2

最後に青年は刀でリングマの胸を突いた。リングマはあっけなく死んだ。その日青年はリングマを三十匹殺した。それから青年はいつも刀を持ち歩き、出会ったポケモンを傷つけてみたり、体の一部を切ってみたりして遊んだ。

ある秋のこと、青年は薪を探している間に道に迷ってしまった。しばらく歩くと、リングマの巣穴に出くわした。見ると中に年老いたリングマが横たわっていた。年老いたリングマは青年を見て言った。

「入ってこい」

青年は迷ったが、外が暗くなってきたので穴の中に入った。間もなくすると巣穴に人が次々と入ってきた。やがて部屋の中は人でいっぱいになった。見ると人の顔はみな傷だらけで、目がない者もいた。人々はおしゃべりをしていたが、青年は無視して眠った。

ある時目覚めると、隣に年老いたリングマが寝ていた。青年はまた眠った。再び目が覚めると、また沢山の人々がいて、何事かを喋っていた。青年はまた無視して眠った。

やがて春になると、年老いたリングマが言った。

「家に帰りたいか。では家に返してやろう。家に帰ると、じき村の近くでホエルオーが見つかるだろう。そこへ行け。わたしたちは一人の男を遣る。おまえは刀を置いて、証人を連れて行け。どうしてお前はあんなことを、顔を切ったり鼻を削いだりしたのだ」

年老いたリングマが青年を村まで送った。

村に帰った青年は、人々に起こったことをすっかり話した。

そして翌朝青年は、村人を連れ、海岸に向かった。海岸を歩いていると、大きなホエルオーがいた。そしてその近くの砂浜にヒメグマがいた。青年に気がつくとヒメグマは森に隠れ、代わりに大きなリングマが出てきた。

P3

リングマが襲いかかってくると、青年は隠し持っていた刀を抜こうとした。しかし、刀がひっかかってうまく抜けなかったので、青年もリングマに掴み掛かった。

青年とリングマは組み合って、拳で互いの顔を殴り合った。お互いの首をありったけの力で首を絞め合った。そして、そのままお互いの息の根を止め、重なるように倒れた。

村人は、帰って見たことを人々に話して聞かせた。

考察と備考

ジョーカー

全体の流れを要約しますと、望まれぬ形で生まれた男が孤独の果てに人格破綻者となり、数多の人物を殺傷、最後は殺されてしまうという内容です。

「ハーメルンの笛吹き男」は実際に起きた事件を元にしている――なんて話は有名ですが、本稿も同じような意図で作成されたと思われます。ポケモンで置き換えられていますが、実際には異なるコミュニティに所属する人間を表すものでしょう。

最初に殺害されたのは30体の《リングマ》ですが、これは「津山30人殺し」を意図したものか、ただの偶然なのか。

原型と思われる《ラプラス》のバージョンでは、まだ英雄的な側面が描かれていますが、決定稿と思われるこちらでは、徹底して悪辣な人物になっています。

オクタン

水を口より噴射する技は同じだが姿あまりにも違うゆえに長き間テッポウオの進化と信じられず。

Pokémon LEGENDS アルセウス

資料のタイトルは《オクタン》なんですが、内容的には《リングマ》の方が扱いが大きいです。

後の《リングマ》が人間の置き換えなので、ここで登場する《オクタン》も人間の置き換えである可能性が高いです。古いバージョンでは《オクタン》ではなく、《ラプラス》が相手でした。

恐らくは有名な葛飾北斎の有名な浮世絵「蛸と海女」から着想を得て、《オクタン》に変更したのだと思います。

サメハダー

鉄板もかみちぎるキバを持ち泳ぐ速度は時速120キロ。別名は海のギャング。

ダイヤモンド・パール

製鉄の技術を持つ他部族の女性の寓意というのが本線だと思います。恐らくは海のポケモン=異なるコミュニティに属する女性、陸のポケモン=異なるコミュニティに属する男性です。

《サメハダー》の属するコミュニティでは、神事として鉄器を利用していたが、それを拾った主人公は武器として使ってしまった――という意図も感じられます。

リングマ

ヒスイの地を寒気覆いたる季節好物の木の実集めに野山を徘徊す。空腹ゆえ気が立ち極めて凶暴。

Pokémon LEGENDS アルセウス

元ネタが北海道なので再三登場するポケモンです。ただし、本稿の《リングマ》は本当に《リングマ》なのか怪しい部分があり、人間を置き換えたものと考えられます。

古いバージョンと思われる《ラプラス》ではより分かりやすい記載があり、《リングマ》の巣穴が人間の木製住居に変わるという表現があります。

バリエーション(ラプラス)

ほぼ同じ内容で最初に登場するのが《ラプラス》に変更されたバージョンが存在します。

こちらはタバコを吸う文化の同一性などから、登場するポケモン達が人間の寓意であることが分かりやすくなっています。

また《ホエルオー》が《ヒメグマ》に殺されていたり、主人公である男性が優れた狩人である英雄的な側面が描写されていたりで細々とした違いがあります。神話において英雄の出生は特殊なものであるケースは多々あるため、元々は《ラプラス》=精霊、神の化身で、主人公は半神だけど孤独で理解されないという意味合いのテキストだったのかもしれません。

情報元 - ポケモン民話集 「オクタン」

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