情報元 https://esports-world.jp/interview/38430
世界規模の格闘ゲームの祭典「EVO Japan 2024 Presented by ROHTO」が2024年4月27日(土)〜29日(月・祝)にかけて開催され、『ストリートファイター6』部門で、ドミニカ共和国出身のMenaRD選手が「EVO Japan」初優勝を果たした。MenaRDにとって「EVO」の冠がついた大会の優勝も初となる。
一度も負けることなくパーフェクトな試合を見せたMenaRD
『ストリートファイター6』部門のエントリー総数は5089名にも及び、日本のプロはもちろん、世界中の猛者たちも集結。例年にも増して活況を呈していた。日本ではリリース以来、初心者でも楽しめる「モダンタイプ」の当サイト、有名なストリーマーやFPSやMOBAのプロ選手もプレイするなど、格ゲーシーンが一気に盛り上がってもいる。実際多くのプロやストリーマーも予選から参加し(「EVO Japan」にはシードなどが存在しない)、会場では誰もが選手として同じテーブルを囲んで対戦もしていた。
予選の様子
そんな中でも、2017年と2020年の「Capcom Cup」覇者であるMenaRD選手の強さは群を抜いていた。「ストリートファイターリーグ Pro-US」では、ルーク、ブランカ、JPという3キャラを相手に応じて使い分けつつ、しかもそれぞれの練度も非常に高いことでも脅威となっていた。
実際、優勝まで1度も負けることなくウイナーズサイドを戦い抜いたその試合数は13戦。IBUSHIGINのYanai選手、Oil King選手、Xiaohai選手、ときど選手らの強豪もねじ伏せており、決して運だけではなかったことも明らかだ。
最終日のベスト6では、FAV Gamingのりゅうきち選手にあとわずかというところまで追い詰められたものの勝ち上がり、NuckleDujoのLexx選手に勝利してグランドファイナルへ。一方、IBUSHIGINの翔選手はプール初戦でりゅうきち選手に負けたものの、そこからはひたすらルーザーズを勝ち抜き、ルーザーズファイナルからグランドファイナルへと駒を進めた。
ひたすら投げを押し付けたMenaRDの戦術
まるでドラマのように、若きふたりのプレイヤーがグランドファイナルの舞台に立った。ルーザーズから勝ち上がった翔選手は3セット勝利してリセットした上で、さらに3セット勝利しなければ優勝できないという圧倒的不利な状況だ。
リラックスして試合前の握手に臨もうとする翔選手に対して、MenaRD選手はあえて握手をせず睨み合い、闘志を隠そうとしない。
他の選手には見せなかった“圧”を翔選手に向けたMenaRD選手
グランドファイナルでは、翔選手がJP、MenaRD選手がブランカを選択。遠距離が得意なJPに対し、近距離からの空中コンボが強力なブランカは懐に入れるかどうかが鍵となる……はずだった。
しかし、スライディングやローリングアタックで虚をつくMenaRD選手は、一度近づいてから執拗に翔選手のJPにまとわりつきながら、積極的に投げを重ねていく。投げと打撃の2択に持ち込んだ上で壁際に追い詰められるとJPはつらい。さらに、エレクトリックサンダーによる削りで翔選手のやりたいことを封じてしまう。
ここまで勝ち抜いてきた翔選手の何もできない状況に、会場全体から息を呑む音が聞こえる。翔選手も空中投げやあえて前に出る動きで展開を変えようとしたが、あらゆる技で返していくMenaRD選手の方が一枚上手だった。まさかのストレート勝利で、MenaRD選手が勝利を決めた。
優勝直後に壇上で語られた「MenaRDは日本から生まれた」という言葉の真意、翔選手への並々ならぬ敵対心、タイトルが変わっても変わらない強さの秘密を、試合後にインタビューした。
実は徹底的に対策していた翔戦
──「EVO Japan」での初優勝、おめでとうございます! 率直な感想をお聞かせください。
MenaRD:すごくうれしいです。
──優勝後のインタビューで「MenaRDはストリートファイターそのものだ」とおっしゃっていました。どんな思いだったんでしょうか?
MenaRD:やはり日本は格闘ゲームというカルチャーが生まれた場所です。なので、“MenaRD”というキャラクターも格闘ゲームコミュニティがあるからこそここで生まれた、という意味でした。
──『ストリートファイターV』から『ストリートファイター6』に変わり、キャラクターも変わりました。ゲームや競技に対してはどんな印象をお持ちですか?
MenaRD:キャラクターが変わったことは確かにそうなんですが、競技を戦う上ではとにかく自分のメンタルをベストに保つことが一番重要だと思っています。やっぱり自分が試合に対して集中できていたことが、今回勝てた要因のひとつです。
──中でも、グランドファイナルでの翔選手のJPとの試合が非常に印象的で、正直ブランカであそこまで圧勝するとは思っていませんでした。ブランカの強さの秘密はどこにあるんでしょう?
MenaRD:とにかく翔選手は僕にとって気の抜けない存在で、寝る時でも思い出すくらい彼のことばかりを考えていました。
これまでの戦いの中でも、ラスベガス(EVO 2023)でもサウジアラビア(Gamers8)でもシンガポール(Capcom Pro Tour 2023 シンガポールオフライン)でもやっぱり負けたりしていたので、ずっと彼を倒すことばかり考えてきました。JPだけじゃなく、すべての翔のビデオをチェックしていたので、彼との戦いを想定してずっと練習してきました。今回「EVO Japan」でこうやってリベンジできたことが何よりも嬉しく思っています。
──「EVO Japan」に参戦してみてどう感じましたか?
MenaRD:日本での『ストリートファイター6』の受け入れられ方は本当に本当に素晴らしいと思っています。今回5000人を超える大会になりましたが、まだ「Capcom Pro Tour」が始まっていないところで正直参加するかどうか悩んでいた部分もありました。ですが、これだけ大きな、歴代3番目の規模の大会というところも含めて、これは出なきゃいけないと考えました。3日間の経験すべてが、僕にとってすごく印象的でした。
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インタビューの中で、「この選手はきつかったなという選手は?」との問いにはFAV gamingのりゅうきち選手の名前を挙げていた。実は今大会を通して、MenaRD選手が負けそうになった、つまりゲームカウントイーブンになったのは、予選でのXiaohai選手(2-1で勝利)とウイナーズセミファイナルのりゅうきち選手(3-2)の2人のみ。りゅうきち選手との試合では「自分のミスもあってギリギリの状況に追い込まれました。最終的に勝てて良かったですが、その瞬間は息が上がるというか、緊張した部分もありました」とも語っていた。
『スト6』に変わっても以前とまったく変わらず、常に安定してトップで戦い続けているMenaRD選手。勝利直後に優勝トロフィーを掲げる姿には、常勝王者という風格さえ漂う、自信のある表情も見せ、さまざまな大会での勝利経験を経て、揺るぎない自信も持っていることを強く感じた。
その一方で、「EVO Japan」会場では、ファンとの記念撮影の長蛇の列を嫌な顔ひとつせず気さくに対応していた姿も印象的だった。
来たる「Capcom Pro Tour」や「ストリートファイターリーグ Pro-US」でも、MenaRDという選手が日本人選手はもちろん、世界中のプレイヤーにとって乗り越えなければならない壁となったことは間違いない。
MenaRDがこれから果たしてどこまで上り詰めていくのか、今年の『スト6』シーンが「EVO Japan 2024」によってさらに楽しみになってきた。
EVO Japan 2024 Presented by ROHTO
ストリートファイター6部門 リザルト(ベスト16)
優勝 MenaRD
2位 翔
3位 Lexx
4位 りゅうきち
5位 VXBAO
5位 もけ
7位 Xiaohai
7位 两两(リャンリャン)
9位 cosa
9位 ばおー
9位 HotDog29
9位 ときど
13位 Problem-X
13位 松五郎
13位 こばやん
13位 Chris Wong
EVO Japan 2024 Street Fighter 6リザルト(start.gg)
https://www.start.gg/tournament/evo-japan-2024-presented-by-rohto/event/evo-japan-2024-street-fighter-6-2
EVO Japan 2024 Presented by ROHTO
https://www.evojapan.gg/